角松敏生のニューアルバム『THE MOMENT』が凄い!
- 2014/7/7
- 02 長崎音楽日記
- THE MOMENT, 角松敏生
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トータル22分、6章からなる大作曲、「The Moment of 4.6 Billion Years~46億年の刹那~」のミュージック・ビデオの完全版が満を持してYouTubeに公開された。
角松敏生が放つ音楽絵巻
これまでの長年のサポートミュージシャンを一新し、角松敏生が放つこれまでのキャリアの集大成の音楽絵巻と言える出来映えである。
ロック的要素からポップス、ブラックミュージック、フュージョンと云ったその時々の時代を彩ったサウンドを身にまとった長いキャリアの中での一つの到達点であり、新しい音楽シーンを牽引する覚悟が見て取れる意欲的なトータルアルバムに仕上がっている。
過去の角松と今の角松の融合とのサウンドのせめぎあい。そしてここから始まる新しいサウンドを追い求めての船出を感じずにはいられない。
昔、吉田拓郎が「新しい船には新しい水夫が必要だ」と歌ったメッセージソングはまさに今作にピッタリと符合するようだ。
コンピュータによる楽曲制作が主流の今、角松敏生でしか出せない音が確かにここにある。
肥大化した音楽ビジネスの功罪
かって流行音楽はビッグビジネスとして多くの関連企業を取り込みながら成長した。60年代、若者の音楽として誕生したロックは、時に時代や体制に噛みついたメッセージ色の強い音楽であった。
しかし、ビジネスとして音楽業界が確立し、多くの商業ロックが排泄されロックの魂は死んだ。
これはロックに限ったことではなかった。
レコードからCDへ移ったのと同様、人間系のグルーヴからコンピュータを中心としたデジタルへの移行にともないスピーディーに製作費をかけず、さまざまなジャンルの音楽を構築できる時代へと時は移った。
大量消費の時代と同調するように音楽もまた大量に市場へ投下され、そのほとんどは人々の記憶から消えていく。。。
そんな時代が80年代からこの数年前までの音楽界の状況だ。
角松敏生の目指す到達点
角松敏生のデビューは1981年。シンガーソングライターに留まらず他のアーティストへの曲の提供、そして音楽プロデューサー業も手掛け現在に至っている。
長いキャリアの中ではけして全てが順調な訳ではなかった。1988年の凍結宣言から1998年の復活(解凍宣言)に至る中でのプライベートも含め、ミュージシャンとしての行き詰まりなどを経験し、自分自身に折り合いをつけクリエイターとして一皮むけた角松敏生の解凍宣言以降、今日まで第一線で活躍する姿はコアな音楽ファンにとっても「なにかやってくれるだろう」という潜在的な期待感があったように思う。
約3年数ヶ月における次回作からのインターバルは角松敏生の生み出す音楽の醸造期間であったようだ。
自らもギターを弾き原点に回帰した印象もあるが、この22分に及ぶ大作を聴きとおすに至り、角松敏生のキャリアを時間軸にタイムマシーンで旅するがごとく時代を彩り、また自分自身が創作し世に問うた音楽を6章にこめたメドレーとして次々と展開されていく。
その見事な演奏とダイナミズム感の素晴らしさの22分間はあっと言う間に過ぎ去った。
まさにこれは、角松敏生のサージェントペパーズである。
この溢れるばかりの感性は一体どこへ向かうのだろうか。
イイ感じで年を重ねた角松敏生の姿はおそらくこれが等身大の彼の真の姿なのだろう。
音楽の新しい可能性をも示唆している
Webの爆発的な勢いでの普及がレコードを飲み込んだCDさえも過去のものに追いやろうとしている。
音楽が売れないと言われる時代にあって、ダウンロード数は爆発的な伸びを示している。
音楽が売れないと嘆いているのは、ビジネスとして音楽と関わっている輩であり、今後、新しい形での音楽の普及や、角松敏生らのような人間系の本物の音楽が再びメッセージを持った形で、ビジネスとしての採算性と別次元で音楽が普及する可能性がある。
現にある著名なバンドが、シェアできる視聴者のみに妥当だと思える金額で購入して欲しいという斬新な取り組みを行い、十分採算に値する売り上げをあげている事実があるのだ。
角松敏生の今回のトータルアルバムにみる取組はオーバーであるかも知れないが今後のミュージックシーン、並びに音楽業界の新しいビジネススキームをも示唆しているように感じるのである。
本物は普遍的
とにもかくにも本物の音が詰まっている今作とこのスタジオLIVE映像を多くの方に観て頂きたいと思う次第である。
そこに展開されるのは、普遍的なサウンドであり、人間系が奏でる素晴らしいグルーヴがある。是非ともお聴き頂きたい!
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